イントロダクション

彼女は人生のすべてを語りはじめる

これは私たちの物語
ポルトガルで2万人動員の異例の大ヒット!
リスボンの女性たちが涙した、
痛みと波乱に満ちた暮らし、
そしてその先にある光

ひとり、カーボ・ヴェルデからリスボンにやってきたヴィタリナ。彼女は出稼ぎに行った夫がいつか自分を呼び寄せてくれると信じて待ち続けていた。しかし、夫は数日前に亡くなり、すでに埋葬されていた。ヴィタリナは亡き夫の痕跡を探すかのように、移民たちが暮らす街にある、夫が住んだ部屋に留まる決意をする。そして、その部屋の暗がりで自らの波乱に満ちた人生を語り始める

カーボ・ヴェルデからの移民女性が
ロカルノ国際映画祭女優賞受賞の快挙!
傑作『ヴァンダの部屋』から20年、
鬼才ペドロ・コスタの新たな出発点

彼女の名前はヴィタリナ。自身の名前と同じ主人公を演じたヴィタリナ・ヴァレラ。虚実の狭間で自らの半生を言葉に託し、語りかけるその存在感は見る者を圧倒し、ロカルノ国際映画祭で女優賞を受賞した。
監督は世界を驚愕させた『ヴァンダの部屋』(2000年)から一貫して、移民街フォンタイーニャスを舞台に作品を作り続けている、ペドロ・コスタ。ひとりの女性の苛酷な人生を、暗闇と一条の光の強烈なコントラストで描き、ロカルノ国際映画祭で最高賞の金豹賞を受賞。その新たな出発点として絶賛され、世界中の映画祭が招待、リスボンでは多くの女性たちの共感を呼び公開わずか1ヶ月で2万人を動員するヒットを記録した。

STORY ストーリー

リスボンの片隅、移民たちが暮らす、フォンタイーニャス地区。
明かりも少ないこの街には多くの移民がいる。
路地には独り言をつぶやきながら歩き回る男もいた。

暗闇の空港にひとりの女が降り立った。名前はヴィタリナ。アフリカのカーボ・ヴェルデから出稼ぎに出ていた夫の危篤を知り、ポルトガルにやって来た。だがすでに夫は亡くなり葬儀は3日前にすでに終わっていた。
しかし、ヴィタリナはそのままポルトガルに留まり、夫、ジョアキンの面影を辿るように、夫が借りていた、フォンタイーニャスの薄暗い部屋で暮らし始める。
ヴィタリナは黒い服を身につけ、その部屋には十字架と花と蝋燭、そしていくつかのモノクロ写真が飾られた。
路地に暮らす人々がお悔やみを言いに次々と立ち寄る。
「死んだの?土の下にいるの?」ヴィタリナは言葉を発する。

「リスボン行きの切符が届くのを40年待った。一生待ちぼうけだよ」
「あんた驚いた? まさか私が来るとはね。死ぬときも離れていたかった?」
「私たちは1982年の12月14日に婚姻届を出し、1983年3月5日に挙式をした」

夫の思い出話をしに訪ねて来る者もいる、死に際の様子を話す者もいる。

「あんたはカーボ・ヴェルデに一時帰郷して、たった45日で10室も部屋のある立派な家をひとりで作り、ある日別れも告げずにポルトガルに帰って行った。私はまだ名もない娘を身篭りながら働いた」

ヴィタリナは、近くの荒れた土地に鎌を入れ耕し始める。

路地には神父がいた。独り言を言いながら歩いていた男だ。

ヴィタリナは雨が屋根を強く打ちつける夜にひとりつぶやく。
「この近所の男どもはみんな、悲しげで酔っ払いばかり。つられてあんたも怠け者になって。自分で死へと向かって行った」

教会で神父の礼拝を受けるヴィタリナ。
ヴィタリナの暮らす部屋には誰彼なく訪れ、自らの人生や暮らしの辛さを吐露していく。

丘にある墓地に埋葬された夫。
そこにはヴィタリナと神父の姿があった。

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