2015年 山形国際ドキュメンタリー映画祭 大賞 / 2014年  ロカルノ国際映画祭  最優秀監督賞

ペドロ・コスタ監督作品『ホース・マネー』Cavalo Dinheiro

ほぼ完璧といえる構図、照明、美術が作品にもたらしかねぬ抽象性を、あらゆる生きた被写体が、そのつどまがまがしい具体性へと転化せしめるサスペンス。ペドロ・コスタ監督の最大の野心作は、その野心を超えて、21世紀にふさわしい真の傑作へと昇華する。
蓮實重彦(映画評論家)

ペドロ・コスタの映画はよく見ている。彼は特別な才能を持つ監督だ。
マノエル・ド・オリヴェイラ(映画監督/『アンジェリカの微笑み』)

2016年6月18日(土)〜渋谷・ユーロスペースにてロードショー、全国順次公開

  • ペドロ・コスタ監督「ヴァンダの部屋」「コロッサル・ユース」35mmフィルム上映決定!ユーロスペースにて
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  • 6/27月曜日ペドロ・コスタ再来日!『ホース・マネー』公開記念トークイベント詳細決定!ユーロスペースにて

『ヴァンダの部屋』『コロッサル・ユース』で
リスボンの捨てられた街の人々を見つめた
ポルトガルの鬼才ペドロ・コスタの
新たな傑作が誕生した

山形国際ドキュメンタリー映画祭2015でグランプリにあたる大賞(ロバート&フランシス・フラハティ賞)、2014年のロカルノ国際映画祭では最優秀監督賞と世界中の数多くの映画祭で絶賛され、「サイト&サウンド」や「フィルムコメント」「カイエ・デュ・シネマ」など名だたる映画誌でも2015年のベスト作の一本として選出され、これまでのペドロ・コスタ監督作の中で最も多くの国々で劇場公開されている最新作『ホース・マネー』が満を持していよいよ日本でも公開される。本作はポルトガルの鬼才ペドロ・コスタの新たな地平を切り開く作品として注目され、2015年夏には、ニューヨークのリンカーン・センターでペドロ・コスタ監督のレトロスペクティブが開催された。

『ヴァンダの部屋』『コロッサル・ユース』に続き、リスボンのスラム、フォンタイーニャス地区にいた人々と創り上げ、主人公も『コロッサル・ユース』のヴェントゥーラ。ヴェントゥーラ自身のカーボ・ヴェルデからの移民の体験をもとに、ポルトガルのカーネーション革命やアフリカ諸国の植民地支配からの独立などの近代史を背景に、ポルトガルに暮らすアフリカからの移民の苦難の歴史と記憶を、ひとりの男の人生の終焉とともに虚実入り混じった斬新な手法で描いている。

本作は詩人・ミュージシャンのギル・スコット・ヘロンと共に、音楽を中心とした作品として構想されていた。しかしギルの急逝により方向性が変更されたが、劇中に印象的に流れるカーボ・ヴェルデのバンド、オス・トゥバロス(鮫たち)による歌「アルト・クテロ(高貴なナイフ)」にその痕跡が見てとれる。またマノエル・ド・オリヴェイラ、アキ・カウリスマキ、ビクトル・エリセら巨匠と共にペドロ・コスタが参加したオムニバス作品『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』の一篇『スウィート・エクソシスト』の一部が大胆に組み込まれていることも見逃せない。

この街には移民たちの故郷を想う唄が流れている
時は過ぎ去っていく、ただ静かに
異国の地で翻弄されたひとりの男の人生
その魂は夜に解き放たれた

どこからか手紙が届いた。
いまひとりの男の人生が終わろうとしている。

彼はアフリカの小さな火山の島からやって来た。
あれから何十年経ったのだろうか。いまは記憶も途切れ途切れだ。彼のもとに女が現れた。故郷の島、カーボ・ヴェルデからの知らせを伝えるために。男は移民として日々の糧を稼ぐためにリスボンのスラムに暮らし、レンガ工場や工事現場で働いた。

いまでも思い出すのは、故郷で飼っていた一頭の馬(ホース・マネー)と故郷に残してきた妻の記憶だった・・・。