監督の言葉
私はヴェントゥーラに旅を続けてもらいたかったし、少しのものを見ることで、その印象を得ることができれば十分だった。加えて、それら同じものをいつも見ることが重要に思えた。私は人々に、彼の人生がどれほど重いかを理解し、感じてもらいたかった。
ヴェントゥーラは、私と同じく過去に生きる人間だ。我々は現在にはあまり期待していない。それはそれで構わない! 過去が意味するのは、まったく変わらないということだ。つまりコースを変えたくないのだ。私の過去は、私自身に忠実だ。私と同じように考え、感じる人と出会えたのは幸運だった。まったく信頼するに足らない世界を信じている人間、つまるところ壊れた人間を、私の映画の主題にしたかった。
私には、ヴェントゥーラと同じレベルにいなきゃならないという衝動があった。私は撮影中、毎日起きると自分に言い聞かせた。この世で私をがっかりさせない人間、いつもそこにいてくれる人間は彼1人だけだと。ヴェントゥーラとヴァンダを、知的で優しくて暴力的で、悲劇の"部屋のヒーロー"にする必要があった。はっきりさせておきたいのだがヴェントゥーラは、ほとんどの人よりずっと知的だ。彼の方が、より公正で信念がある。非常に弱い、あるいは貧窮している、または脆弱であっても、これらの人々すべてには、結束とコミュニティーへの帰属という非常に強い思いがあった。
ペドロ・コスタ
(アメリカでのペドロ・コスタ特集「STILL LIVES」パンフレットより抜粋)