キドラット・タヒミックとは?

監督プロフィール

キドラット・タヒミックKidlat Tahimik
(本名 エリック・デ・ギア Eric De Guia)

1942年フィリピン、バギオ生まれ。アジア・インディペンデント映画の父と呼ばれている。

デビュー作『悪夢の香り』(77年)でベルリン国際映画祭批評家連盟賞を受賞。この『悪夢の香り』はフランシス・F・コッポラが激賞し、自らアメリカでの配給も手がけた。フィクションとドキュメンタリーを混在させる斬新な映像話法で描き、笑いのなかに先進国の独善と近代化の裏面を揶揄する『悪夢の香り』は、タヒミックの名を一躍世界に広め、後進のアジアの映画作家たちに大きな影響を与えた。同作品は、1982年の国際交流基金映画祭で上映され日本初のタヒミックお目見えとなった。

続いて、フィリピン人の発明とされる玩具のヨーヨーを月面で実行するという妄想に取りつかれた青年が、家庭の日常品でロケットを組み立てて月旅行を成功させる『月でヨーヨー』(78~81年)、1987年の第2回東京国際映画祭アジア秀作映画部門で上映された『トゥルンバ祭り』(83年)を制作。

1989年の第1回山形国際ドキュメンタリー映画祭では、息子の成長を記録した個人映像から激動のフィリピン現代史を浮かび上がらせる『僕は怒れる黄色』が招待作品として上映された。同作品はその後も増殖を続け、91年、93年の山形でも再編集版が上映され、1994年に『虹のアルバム 僕は怒れる黄色’94』として、はじめて劇場公開された。

山形では、2007年にインターナショナル・コンペティションの審査員も務めた。1996年には愛知芸術文化センターの企画で『フィリピンふんどし 日本の夏』を制作、同作品や『悪夢の香り』を含む4作品が劇場で特集上映された。その後もインディペンデント映画作家の旗手として、自主制作と上映を続けている。

また、自作上映と併催して先住民イゴロト族のグループと踊りや寸劇を行い、美術の分野でも、埼玉県飯能市の竹寺や新潟県の越後妻有にしばしば長期滞在して、インスタレーションや映像作品を創作するなど、ジャンルを越境するアーティストとして幅広く活躍している。1986年にはバギオ・アーツ・ギルドを創設し、若手アーティストの育成にも尽力している。

2012年には、福岡アジア文化賞を受賞。近年は、台湾、韓国(チョンジュ)、ニューヨーク、ベルリンなど、世界各地で回顧上映が行われている。

先頃開催された東京国際映画祭2018ではフィリピン映画100周年を記念して作られたオムニバス映画『それぞれの道のり』にラヴ・ディアス監督、ブリランテ・メンドーサ監督と共に参加している。その直前にはフィリピン芸術界の最高の栄誉である「ナショナル・アーティスト」の称号を獲得した。また、12月にはオランダのPrince Claus Awardの受賞も予定されている。

フィルモグラフィー

1977 『悪夢の香り』(16mm)
Mababangong Bangungot
(Perfumed Nightmare)
1979-1981 『月でヨーヨー』(16mm)
Sinong Lumikha ng Yoyo? Sinong Lumikha ng Moon Buggy?
(Who Invented the Yoyo? Who Invented the Moon Buggy?)
1980-1984 『Memories of Overdevelopment』(16mm)
1980 『メイド・イン・ホンコン』(16mm中編)
Yanki: Made in Hongkong
1981 『Olympic Gold』(16mm)
1983 『トゥルンバ祭り』(16mm)
Turumba
1987-1993 『僕は怒れる黄色』(16mm)
I am Furious Yellow
1988-89 『竹寺モナムール』(ビデオ)
Takadera Mon Amour
1990-1992 『息子への手紙』(ビデオ短編)
Letter to my Sons “Orbit 50”
1994 『虹のアルバム』(16mm)
Bakit Yellow ang Gitna ng Bahaghari? (Why is Yellow Middle of Rainbow?)
1995 『Our Bomb Mission To Hiroshima / Celebrating the Year 2021,Today』(ビデオ短編)
1996 『フィリピンふんどし 日本の夏』(16mm中編)
Bahag ko, Mahal ko (Japanese Summers of a Filipino Fundoshi)
1999-2001 『ホーリーウッド』(16mm &ビデオ)
Banal-Kahoy, (Holy Wood)
2001-2005 『Samurais in Search of Some More Rice』 (ビデオ短編)
2003 『Aqua Planet』(ビデオ)
2005 『Tatlong Atang at Isang Pagnakaw』(ビデオ)
2007 『Bubong (Roofs of the World! Unite!)』(ビデオ)
2009 『物寂しい荒野に平和を垣間見ること』(ビデオ)
Glimpses of Peace during the Howling Wilderness
2009 『我が子を撮り続けて20年(ビデオサラダ 3人の息子+1)』(ビデオ短編)
20 years-Just Video-ing My Children (a video salad of my 3 sons +1)
2009 『群生するイメージは…島?』(ビデオ)
each film . . . an island?
2015-2017 『500年の航海』(DCP)
Balikbayan # 1 ― Memories of Overdevelopment
2018 『Lakan Ni Kabunyan (Kabunyan’s Journey)』
(DCP、オムニバス映画『それぞれの道のり』の一編の中編)