12月号では、オーストラリアに生きる韓国移民2世の監督が家族と
恋愛を描く、短編2作品の上映。この2作は2001年の小川紳介賞
(アジア部門最優秀賞)を受賞し、審査員だった故佐藤真氏が絶賛
した。典型的に保守的な1世の両親に反発し家を飛び出した高校生
のメリッサ。七年間の絶縁を経た彼女が作った『夢の中で』は両親
への「優等生的」和解のラブレターだが、『愛についての実話』
と併せて初めて「コリアン」であり「オーストラリアン」でもある
作者の素顔を見せてくれる。
【YIDFF2001 小川紳介賞受賞時 審査員講評】
家族というプライベートなテーマを独自のアプローチによっ
て限りなく楽しく、しかし、その中にも移民として暮らす悲
哀をそこはかと醸し出す『夢の中で』。アジア人男性という
ステレオタイプを監督自らの恋愛劇というフィクションを通
じて刺激的に切り取った『愛についての実話』。この対照的
な2本の作品を作り上げた大いなる未来を感じさせる監督の
作家性に高く評価と賞賛を送る。
審査員:佐藤真、チャリダー・ウアバムルンジット
上映会情報
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月刊ヤマガタ12月号
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〜 多文化社会を生きる私たちの家族&恋愛 〜
『夢の中で』『愛についての実話』
上映 & ゲストトーク(山之内悦子さん)
□ 12月22日(月) □ Open 19:00 / Start 19:30
□ 入場料 1500円(1ドリンクつき)
□ UPLINK FACTORY
(渋谷区宇田川町37-18トツネビル1F 渋谷東急本店右側200m右手)
TEL 03-6825-5502 www.uplink.co.jp
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【トークゲスト】
山形映画祭に第一回目(1989年)から舞台通訳として活躍してい
ただいている山之内悦子さん。山之内さんは人種の坩堝カナダに
20年以上在住し、肌の色や文化宗教の異なる友人たちと生活をし
てきました。昨年から日本に帰国し、急速に国際化(?)する東
京で暮らすにあたって思うところなど、「多文化社会の家族と恋
愛」について一緒におしゃべりをします。聞き手は山形国際ドキ
ュメンタリー映画祭東京事務局の藤岡朝子。どうぞご参加ください。
【上映作品紹介】
『夢の中で』
(オーストラリア/1999/韓国語、英語/カラー/ビデオ/26分/監督:メリッサ・リー)
朝鮮戦争後、祖国をあとにオーストラリアに新天地を求めた両親。
学業としつけに厳しいその教育方針に反発し家出した娘が、7年間の
絶縁を経て、映画づくりの中で、知らなかった両親を再発見した。
実は歌手になりたかった父、映画づくりの現場で大活躍する母...。
この作品は娘からの「優等生的」和解のラブレターなのだが、『愛
についての実話』との2本1組でようやく、「コリアン」であり「オ
ーストラリアン」でもある作者の素顔が見えてくる。
『愛についての実話』
(オーストラリア/2001/英語/カラー/ビデオ/27分/監督:メリッサ・リー)
サンフランシスコの映画祭に招かれ、韓国系アメリカ人監督について
の映画を企画した。ところが、行ってみたらいきなり恋に落ちてしま
った。しかも2 人同時に。アジア系男性のコンプレックス、韓国系の
男たちに対する自分の偏見、ベッドにまでカメラを持ちこむことの倫
理など、きわどい問題にさりげなく触れながらユーモラスに個人映像
世界を展開させる。
【メリッサ・リー監督の言葉】
私は特にマイノリティーの観点から、真実と表現の概念を探
っていきたかった。西側のメディアによる韓国人やアジア人
の表現のされ方に満足したことがなかったからです。どのよ
うにアイデンティティ、キャラクター、関係を作り上げるか
という概念すべてが、私にとってとても興味深いことなのです。
(出典:「YIDFF2001記録集」 デイリニュース班インタビューより)
【「月刊ヤマガタ」のコンセプト】
山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された後、あまり上映の機会がな
いまま忘れられた傑作・名作・珍作。白銀世界も間近な山形のドキュメンタ
リーフィルムライブラリーから直送、収蔵作品の再発掘上映が定期的にス
タートしました。