2005年の山形映画祭では1999年の上映に引き続き、台湾の記録映像製作グループ「全景」にフォーカスし、全景の集大成とも言える1999年台湾大震災のその後を記録したシリーズを紹介しました。グループ全体で取りかかったという全7作のうち完成した6作はいずれも圧巻、実力の充実度を感じました。メンバー13名も来形し、上映後の質疑応答、全景の活動やシリーズ全体についてのレクチャーも行いました。質疑応答では観客より阪神大震災後の体験に触れる場面も多く、作品を身近に感じながら熱のこもった感想が寄せられ、また長期に渡り人々に密着した作品に驚きと賛辞が送られました。監督たちからはカメラを持たずに現地での復興支援から始めた撮影裏話や台湾語、北京語、客家語、タイヤル語を話す人々の関係性など台湾社会の変遷や歴史。編集段階で何度もメンバー内で見せ合い、作品を彫琢していったプロセス、現場に飛び込み1から学んだスタッフ、特に女性メンバーが力量を上げ、製作の中核を担うようになったことなどが語られました。大震災からの復興と、危機に際し噴出した既存の問題の狭間でも、人々が力強く生きていく姿を記録に収めたこのシリーズは、人々の経験のかけがえのなさがスクリーンより溢れ出ている作品です。これらは作品を見た人たちに確実に引き継がれていくことになると思います。未完成の7本目となる『再見長寮尾』の完成を待ち望みながら、生み出された作品と全景の試みの重要性を改めて認識するプログラムになりました。
山形映画祭での質疑はコーディネーターの吉井孝史氏を司会に、上映後まず観客のみなさんから感想と質問をいただいてから、監督による応答がされました。10月9日には全景メンバー全員によるご挨拶と代表の蔡静如(ツァイ・ジンルー)さんによる今回のシリーズについての講演とスライド上映も行われました。今回のドキュメンタリー・ドリーム・ショー(DDS)ではシリーズより『天下第一の家』『梅の実の味わい』『部落の声』『三叉坑』を上映いたします。9月26日の『三叉坑』上映後には吉井孝史さんのトークを予定しています。今回上映する4本の山形映画祭時の質疑応答をレポートに掲載しました。ぜひご覧下さい!