蒋(チァン)氏の家
Last House Standing
中国/2004/中国語/カラー、モノクロ
ビデオ/54分
Dir. 干超(ガン・チャオ)、梁子(リャン・ツ)
イノセント
Innocent
シンガポール/2004/英語、中国語、他
カラー、モノクロ/ビデオ/27分

Dir. 陸麗珊(ルー・リーシャン)、何俊雄(ホー・ジュンション)
イノセント公式サイト »
上海再開発に伴い、まもなく取り壊されるお屋敷で、舶来のレモンティーを淹れる一人の初老男。激動の歴史に翻弄されまいと、守り続けてきた家と孤独なマイスタイル。ところが北京からやってきた若い女性の間借り人(監督)が彼の空間に踏み込んでくる…。自殺事件を追いかけたシンガポール作品『イノセント』を同時上映。

蒋氏の家
Last House Standing

中国/2004/北京語/カラー、モノクロ/ビデオ/54分
監督:干超(ガン・チャオ)、梁子(リャン・ツ)
撮影:梁子 撮影助手:朱騫(チュー・チエン)、干超
編集:干超 整音:沈顔村(シェン・ハンツン)
美術:余蒙<青見> (ユィ・モンリアン)
エグゼクティブ・プロデューサー:袁曄<王民>(ユェン・イェミン)
製作:王小龍(ワン・シアオロン)
製作会社、提供:上海テレビ局

干超(ガン・チャオ)
Gan Chao

2000年、上海の復旦大学の中国語中国文学学科を卒業。その後はブリストル大学で学び、2年後にテレビ学の修士号を取得する。同年『More, or One』を監督。その他の作品歴に『Entrance to Solitude』(2003)、『Come and Dance, Burka』などがある。また、上海テレビ局のドキュメンタリー・チャンネルで、監督、編集、プロデューサーを務めている。

梁子(リャン・ツ)
Liang Zi

1980年代前半、中国の青海地区とチベットで、写真家、レポーターとして働く。1990年に雑誌『Jingxiu』のチーフ・フォトグラファーとなり、1999年には『戦場からニイハオ!』(光文社)を出版した。2000年から2003年にかけて、アフリカのレソト、シエラレオネ、エリトリアで1年3カ月過ごし、『Africa Is Right Here』(2000)、『Go for Africa』(2001)、『Sea and Sand』(2003)を撮影した。

監督のことば
『蒋氏の家』の製作と撮影には、2年の歳月を要した。資金面での制約があったため、難しい作業だったが、撮影の初日から私たちの心は、蒋氏と彼の家の物語のとりこになってしまった。そして、自分たちはある回顧録を撮影しているのだと気がついた。たとえそれが、名もない人物の歴史であったとしても。
この老人と彼の家がくぐり抜けてきたすべての困難は、その当時の中国の辛い歴史と密接に結びついていた。この古い邸宅は、1930年代上海のデカダンス、内戦後の解放、そして文化大革命の嵐の証人だ。それ以降も、現代の上海で起こっている急激な変化を引き続き目撃している。この家は、単なる無機的な建造物ではなく、歴史、家族と感情の生きた混合物であり、蒋氏は60年という歳月のなかで、その重荷をひとりで受けとめてきた。彼の歴史は、中国社会の歴史でもある。映画のなかの彼のため息や思い出の一つひとつが、私たち自身の人生や過去についての思いを表している。
この映画が上海で放映されると、前例のない熱狂で迎えられた。もしかしたらそれは、この映画が真実を語っていたからかもしれない。あるいは人々が長い間、圧し殺してきた感情を、解き放つ助けになったからかもしれない。隣国である日本でも、このドキュメンタリーのメッセージすべてを理解してくれるだろうと、私たちは信じている─これは誰かの物語であると同時に、私たち自身の物語なのだ。この作品でも問われていたように、歴史を逃れて生きることなどできるのだろうか?

シノプシス
1930年代から上海を見続けてきた家とそこに独りで住む上海ダンディーな蒋(チアン)氏。再開発の一環で、まもなく壊されるこの家に間借りすることになった女性からの猛烈な追求に、寡黙な彼が口を開き、独自の哲学と個人史が紐解かれる。戦中の上海、文化大革命の煽り、そして現在と中国の歴史に翻弄された彼の人生から滲み出す哀愁が、周囲の情景や対照的なふたりのやりとりと相まって、作品に絶妙な陰影を漂わせる。


イノセント
Innocent
无知罪

シンガポール/2004/英語、北京語、潮洲語、福建語/カラー、モノクロ/ビデオ/27分
監督、撮影:陸麗珊(ルー・リーシャン)、
何俊雄(ホー・ジュンション)
編集:陸麗珊
音楽:イーサン・タン
提供:陸麗珊

陸麗珊(ルー・リーシャン)
Gek Li San
1973年生まれ。テレビドキュメンタリー、娯楽、国際、スポーツ、紀行番組などの編集を幅広く手がけ11年のキャリアを持つ。長年にわたり短編映画を多数製作。これまで編集した作品は、数々の国際的な賞を受賞。『Moving House』は、2002年に学生アカデミー賞ドキュメンタリー部門ゴールド・メダルを受賞。実験短編映画『Happy Birthday Sharon』は、2003年にイスタンブールで開催された第2回AFM国際インディペンデント映画祭で最優秀短編映画賞を受賞した。

監督のことば
調査を突き進める程、灰色の部分が広がり、白と黒だけではないことを学んだ。知れば知るほどわからなくなってくる。それでもその過程で自分が得た収穫は大きい。自分の親戚にとってもそうであって欲しいと思う。(陸麗珊)

何俊雄(ホー・ジュンション)
Ho Choon Hiong
1975年生まれ。デビュー作『Goddess of the Neon City』が、シンガポール国際映画祭の最優秀短編映画賞の最終選考に残った。その後、ディスカバリーチャンネルとメディアコープ・アーツ・セントラルなどでテレビの制作に携わる。

監督のことば
陸麗珊の叔母が他界してから2年が過ぎた。奇妙なことだが、彼女を尋問した警察官のことを時々考えてしまう。彼のインタビューは撮影しなかったが、その警官と電話で話をした。その時、彼自身もこの自殺に動揺しているのだと気づいた。もう大丈夫だといいのだが。
そして、残された家族、特に子どもたちには、母親のように自分の殻に閉じこもらないで、立ち直って欲しいと願っている。
最後に、近い将来、シンガポール人が、何かにおびえたり、反動を気にすることなく、堂々と本心を言えるようになって欲しいと願っている。(何俊雄)

シノプシス
葬式で初めて叔母の死が自殺であったことを知った監督が、遺された子ども、夫と共に現場検証するかのように事件の起こった冷たいコンクリートの建物へ赴く。かつて彼女が生きていた空間を映像に甦らせ、自殺の事実そのものだけではない何かを探すように、様々な方向にカメラを向ける。事件の背景をもっともらしく説明する親族や関係者たち、対照的に口を閉ざす当事者。浮かび上がってくる真相や親戚たちの証言の割れ目からシンガポールの閉塞感がにじみ出る、パーソナル・ドキュメンタリーの新しい地点。
本作は2004年、シンガポール国際ドキュメンタリー祭、タイ短編映画祭、ロンドンICAのシンガポール・シーズン2005で上映、シンガポール国際映画祭で審査員特別賞及び特別功労賞を受賞した。

10.11(水)15:00 @アテネフランセ文化センター
10.14(土)16:00 @アテネフランセ文化センター

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主催◎シネマトリックス
共催◎山形国際ドキュメンタリー映画祭実行委員会、アテネ・フランセ文化センター、映画美学校、ポレポレ東中野
協力◎東京国立近代美術館フィルムセンター、大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)、東北芸術工科大学東北文化研究センター

フィルム提供:
アテネ・フランセ文化センター、アリイケシンジゲート+大きい木、岩波映像、映画「戦後在日五○年史」製作委員会、川口肇、共同映画社、シグロ、疾走プロダクション、自由工房、白石洋子、鈴木志郎康、瀬戸口未来、高嶺剛、W-TV OFFICE、陳凱欣、朝鮮総聯映画製作所、全州国際映画祭、テレビマンユニオン、直井里予、日本映画新社、朴壽南、ビデオアートセンター東京、プラネット映画資料図書館、北星、松川八洲雄、松本俊夫、もう一度福祉を考え直す会・磯田充子、ヤェール・パリッシュ、山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー