25歳、小学二年生
The Spirit of 8
台湾/2003/中国語、台湾語/カラー/ビデオ/60分
Dir. 李家驊(リー・ジアホア)
忘却
Keep the Change
トルコ/2003/トルコ語/カラー、モノクロ/ビデオ/27分
Dir. ジェレン・バヤル、ディレキ・イイギュン、エリフ・カラデニズリ、オズゲ・ケンディリジ、サヴァシュ・イルハン
大人になっても幼少の心の傷から離れられない監督が、じわじわとむしばむ自己嫌悪と決別しようとカメラを手にした『25歳、小学二年生』。傷や弱さをさらけ出した先にあったのは、意外にも温かい涙だった。併映はトルコの刑務所内で抵抗を続けた政治犯たちが受けた武力弾圧を告発する『忘却』。

25歳、小学二年生
The Spirit of 8
25歳、國小二年級

台湾/2003/北京語、台湾語/カラー/ビデオ/60分
監督、撮影、編集、製作、提供:李家驊(リー・ジアホア)

李家驊(リー・ジアホア)
Li Chia-hua

1978年、台北生まれ。台湾の国立政治大学広告学部、台南藝術学院卒業。現在は台南藝術学院博士課程に在籍し、インディペンデント・ドキュメンタリー作家としても活動。作品歴として『Mood of Fencing』(2002)、『The Diary in Front of the Presidentユs Office』(2005)などがある。

監督のことば
大学院の制作課題のおかげで、ずっと大人になりたくなかった僕は、8歳の時から閉ざされた記憶の扉をついに開けることになった。こうして始まった自分探しは、12カ月後、1本の映画と、それをいくつかの映画祭で上映する貴重な機会へと結晶した。僕はあらためて人々と出会い、自分自身とも出会うことになった。だが考えてみれば、こうした変化が望ましいものだったのか否か、今の僕には何とも言いがたい。
いつかは明かりが点り、映画には幕が下ろされ、劇場から人は立ち去る。けれど本当の生活のなかでは物語はただひたすら続いていくしかない。
そう、それが人生というものなのだろう。

シノプシス
8歳の時に自分が起こしたある事件がトラウマなままに成長してきた25歳の監督。子どもならありえる些細なことのようであっても、執拗なまでに当時のことを家族や友人、先生に問い続ける。カメラを使って過去を再構成するかのごとく、「不名誉だ」という家族の目を気にして培った自己嫌悪と決別しようとする。時には自分に涙し、自身の傷を開き、そして癒していく。映画製作を学んで手にしたのは、封印してきた“自身”だった。さて、ここからどこへ向かうのか。



忘却
Keep the Change
Üstü Kalsin

トルコ/2003/トルコ語/カラー、モノクロ/ビデオ/27分
監督、製作:ジェレン・バヤル、ディレキ・イイギュン、エリフ・カラデニズリ、
オズゲ・ケンディリジ、サヴァシュ・イルハン
撮影:サヴァシュ・イルハン 編集:ディレキ・イイギュン
提供:アンカラ大学コミュニケーション学部

エリフ・カラデニズリ
Elif Karadenizli

1981年、トラブゾン生まれ。2003年、アンカラ大学卒業。新聞記者として活躍しながら、短編映画『SOAP』のプロデューサー、女性についての短編ドキュメンタリー映画『That’s All』の監督、プロデューサー、ナレーターを務める。

サヴァシュ・イルハン
Savas lhan

1981年、バルケシル生まれ。2003年、アンカラ大学卒業。カメラマンとして活躍中。

ジェレン・バヤル
Ceren Bayar

1980年、イスタンブール生まれ。2003年、アンカラ大学卒業。写真記者として活躍しながら、『SOAP』『That's All』の監督を務める。

オズゲ・ケンディリジ
Özge Kendirci

1981年、コンヤ生まれ。2003年、アンカラ大学卒業。広告業界で活躍中。『SOAP』のアシスタント・ディレクターを務める。

ディレキ・イイギュン
Dilek yigün

1981年、アンカラ生まれ。2003年、アンカラ大学卒業。広告およびドキュメンタリー業界でアシスタント・ディレクターとして活躍中。

監督のことば
記憶は、何のためにあるのだろう?恐らく、誰もが人生に一度は、デジャヴを経験して、「今と同じ瞬間が、前にもあった」と言うことがあるだろう。ドアがゆっくりと開いた時、友達との会話のなかでふとした時に。「前にも同じことがあったけど、いつ、どこでだっけ?」と。奇妙な感じじゃないか?知っている気がする。いや、絶対知っているはずだと思っても、理由が説明できない。
「これって前にも経験した?」と言ったことがある人は?いや、こう尋ねるほうがいいかもしれない。「『これって前にも経験した?』と、自分に聞いたことがある人は?」。普段私たちは、名前、友達、場所、出来事などを覚えているが、記憶の役割とは何なのだろう?楽しい日々、友達、誕生日パーティーや様々な恋愛を忘れないため?
記憶が、あなたを未来へ導いてくれるガイドだとしたら、子どもの頃は、いいことも悪いことも、将来経験することの教訓となったはずだ。人生から教訓を学んだなら、生きぬくために何度も挑戦し続けることができる。火に触ればヤケドし、石に当たれば痛く、雨の後は必ず太陽が照ることを学んできたのだから。
このドキュメンタリーのヒーローたちは、もう一度人生を生き直さなければならないが、過去から教訓を学べない。ハンガーストライキを始めてから、政府の武力介入で終結するまでの記憶がないからだ。そして最も重症なのは、事の始終の目撃者であったにもかかわらず、これらを覚えていられないという社会なのだ。(5人の監督を代表して、エリフ・カラデニズリ記す)


シノプシス
2000年12月19日トルコ各地の刑務所で「Fタイプ」という独房に抵抗し、2カ月に及ぶ「死のハンスト」を続けていた政治犯たち。「救出作戦」の名目で一斉に治安部隊が武力制圧し、大量の死傷者を出した。煙やざわめきを伝えるニュース中継、「個室の快適さ」を宣伝する刑務所、事件を「憶えていない」街の人々の顔。事件によって記憶障害を抱え、共同生活を送る元政治犯たちの表情と声と記憶の今を留め、事件を能動的に忘れるトルコ社会を刻みこみ、忘却の暴力に抵抗を試みる。

9.18(月/祝)20:05+トーク(李家驊) @ポレポレ東中野
9.22(金)19:35+トーク(李家驊) @ポレポレ東中野
9.28(木)12:30 @ポレポレ東中野

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主催◎シネマトリックス
共催◎山形国際ドキュメンタリー映画祭実行委員会、アテネ・フランセ文化センター、映画美学校、ポレポレ東中野
協力◎東京国立近代美術館フィルムセンター、大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)、東北芸術工科大学東北文化研究センター

フィルム提供:
アテネ・フランセ文化センター、アリイケシンジゲート+大きい木、岩波映像、映画「戦後在日五○年史」製作委員会、川口肇、共同映画社、シグロ、疾走プロダクション、自由工房、白石洋子、鈴木志郎康、瀬戸口未来、高嶺剛、W-TV OFFICE、陳凱欣、朝鮮総聯映画製作所、全州国際映画祭、テレビマンユニオン、直井里予、日本映画新社、朴壽南、ビデオアートセンター東京、プラネット映画資料図書館、北星、松川八洲雄、松本俊夫、もう一度福祉を考え直す会・磯田充子、ヤェール・パリッシュ、山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー